概要
肺癌はわが国の悪性腫瘍の中で頻度が高く、がん死因の中で第1位となっています。
治療方法は、外科療法(手術)、化学療法(抗がん剤治療)、放射線療法、緩和治療がありますが、肺癌の種類や進行度によりこれらの治療を単独または組み合わせて治療を行います。
診断
肺がんは初期には無症状であり、健診などの胸部レントゲンにより偶発的に発見されることが多く、進行期には症状を認めることがあります。症状としては肺がんが周りに広がることによる症状と、転移による症状に分けられます。具体的には前者としては「息が苦しい」、「胸が痛い」、「咳や痰が続く」などがあり、後者としては「頭が痛い」、「背中が痛い」などがあります。 肺がんを診断する際には、各種画像検査と組織診断を得るための検査を組み合わせて、肺癌の種類(組織型)と進行度(病期)を判断して、治療方針を決定します。
画像検査としては、レントゲン、CT検査、MRI検査、PET検査などを用いて評価することが多いです。
組織診断としてはがんそのものから組織を採取して組織型を調べます。
主な検査方法としては気管支鏡検査とCTガイド下経皮的肺生検などがあります。
気管支鏡:5mm程度のファイバーを、口から挿入し、気管から気管支へと進めていき、生検鉗子等を用いて目的の場所から組織を採取します。
CTガイド下経皮的肺生検:CT検査でがんを確認しながら、生検用の針を体の外から刺して組織を採取します。
治療
外科療法
早期肺癌に対して行われ、手術によりがんを最も治癒させる可能性の高い治療法です。
最も多く行われている標準的な手術は、病巣のある肺葉を切除する肺葉切除術+周辺のリンパ節を取り除くリンパ節郭清術です。手術の際には多くの場合で胸腔鏡を用いており、傷が小さく患者さんへの負担を少なくすることが可能となっています。腫瘍が大きい時や、周辺臓器への浸潤が認められた場合などは開胸手術を行います。
早期肺癌であれば基本的には手術を選択することが多いですが、全身の状態により放射線治療などを行うことも検討されます。
放射線療法
放射線を体の外から照射して、がんを小さくする効果があります。がんを治癒させるために用いる時と病気の進行を遅らせるためや症状を緩和するために用いる時があります。
特に脳転移病巣に対してはガンマナイフやサイバーナイフと呼ばれる照射方法で良好な治療効果が望めます。最近は定位放射線治療といった1回に大量の照射を行う治療も行っています。
化学療法
化学療法の治療成績は、少しずつ向上してきていますが、まだ十分とはいえず、化学療法のみで肺がんを根治することは困難です。非小細胞肺がんでは病期に応じて手術や放射線治療と組み合わせて、あるいは単独で化学療法を行います。小細胞肺がんは診断された時点で転移がみられることが多い一方で、非小細胞肺がんに比べて化学療法の効果が高いため、化学療法が治療の中心になります。化学療法に用いる抗癌剤は副作用を伴うことが多いため適応となるのは全身状態が良好な患者さんとなります。
化学療法の種類としては抗癌剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬があります。これらの薬剤はがんの種類や遺伝子検査などを行って、どの薬剤を使用するかを決定します。