立川病院

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はじめに

胃がんは、消化器がんの中でも大腸がんと並んで治りやすいがんのひとつと言われています。その背景には、X線検査や内視鏡検査の診断レベルが向上し、早期の胃がんがたくさん見つかるようになったことや、手術など治療の技術が進歩したことが挙げられます。また、抗がん剤を用いた治療も進んできており、手術などで治せない場合や再発した胃がんの治療に成果を上げつつあります。
胃がんには初期には特徴のある症状を認めません。胃がんは早期に発見されれば治癒できる可能性の高いがんの一つですので、みぞおちの不快な感覚や腹痛、異常なお腹の膨満感などがある場合には、胃の検査を受けるようにしましょう。自覚症状がなくても定期的に検診を行い、早期発見することが重要です。場合によっては、貧血をきっかけに検査が行われ胃がんが発見されることもあります。
当院では、胃がんが心配で来院された患者さんに対して、速やかに胃内視鏡検査を行い、診断を行う体制を整えています。

検査と診断

内視鏡検査(胃カメラ)

内視鏡的に胃がんが疑われた場合、一部を採取して顕微鏡の検査(組織学的検査)を行います。組織学的にがんの診断がつくと、胃がんの確定診断となります。
また、手術の前には、切除する安全なラインに印をつけるために内視鏡検査を行うこともあります。

胃X線検査

胃がんの検診で、最もよく用いられている方法です。バリウムを飲んで検査をします。
検診でチェックされますと、精密検査を奨められることになります。病院では、さらに精密X線検査で、胃がんの胃の中での正確な広がりを診断します。

CT検査

この2つの検査は胃がんそのものというよりも、周囲の肝臓、胆嚢、膵臓の異常や胃がんとそれらの関係、あるいは胃の周りや少し離れたリンパ節の状況などの診断を目的としています。また、CT検査では他の臓器に転移があるかどうかもわかります。

内視鏡治療

内視鏡治療はリンパ節への転移の可能性がほとんどなく、腫瘍が一括切除できる大きさと場所にある場合に適応になります。
また、見た目は良性の大腸ポリープであっても、内視鏡的切除後の組織診断で早期大腸がんであったというケースもしばしばあります。
治療法には内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic mucosal resection;EMR)と内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic submucosal dissection;ESD)があります。
EMRは、粘膜下層に生理食塩水などを局注して病巣を挙上し、病巣茎部を絞扼して電流によって焼灼切除する方法です。主に外来あるいは短期入院で行います。
ESDは、粘膜下層にヒアルロン酸ナトリウム溶液などを局注して病巣を挙上し、専用のナイフで病変周囲を切開し、粘膜下層を剥離して腫瘍を一括切除する手技です。主にEMRでは一括切除できないような大きな早期がんが適応となり、入院、全身麻酔下での治療を基本としております。
2014年には、当院で36件のEMR、2件のESDが行われました。

手術

腹腔鏡手術

腹腔鏡手術とは、お腹に小さな穴を数か所開けて、専用のカメラや手術器具を挿入し、モニターにお腹の中を映して手術を進めるものです。腹腔鏡手術のメリットは、一般的には開腹手術と比較して傷が小さいため術後の痛みが少なく、また身体への負担が少なく回復が早いことが挙げられます。当院では胃がん治療ガイドラインに準じて、Stage Iの胃がんに対して腹腔鏡下にリンパ節郭清を伴う胃切除術を施行しています。

開腹手術

一般的には、みぞおちから臍まで縦に切開し、胃と周囲のリンパ節を併せて切除する手術です。お腹の中を十分に観察でき、あらゆる状況にも対応でき、手術操作が確実にできることから、今でも胃がんの定型手術となっています。胃の切除方法には大きく分けて3通りあります。胃の出口(幽門)側を切除する幽門側胃切除、胃を全部切除する胃全摘、胃の入口(噴門)側を切除する噴門側胃切除です。これらは、がんが胃のどこにどれだけの範囲で存在するかやその進行度によって決定します。また同様に胃がんの範囲や進行度によってリンパ節郭清(リンパ節をきれいに取り除くこと)の範囲も変わります。ある程度進行した胃がんに対しては、胃から少し離れたリンパ節まで郭清するD2郭清を行い、早期胃がんの場合にはこれよりも更にリンパ節郭清の範囲を縮小します。高度進行胃がんの場合に薬物療法と組み合わせた更に広い範囲の拡大リンパ節郭清が行われることもあります。

化学療法

化学療法には大まかに、根治切除が行われた胃がんの術後の再発・転移を抑えることを目的とした補助化学療法と、切除不能進行再発胃がんに対する全身化学療法にわかれます。古典的な抗悪性腫瘍剤加えて、近年登場した分子標的治療薬を積極的に用いることが奨められています。

当院では主に以下の薬剤を使用しております。

1) 経口薬

  • S-1
  • カペシタビン

1) 注射薬

  • シスプラチン
  • パクリタキセル
  • ドセタキセル
  • イリノテカン
  • オキサリプラチン
  • トラスツマブ
  • ラムシルマブ

放射線療法

主には、切除不能進行胃がんの症状緩和や延命を目的とした緩和的放射線療法があります。緩和的放射線療法には、腫瘍による疼痛、出血、通過障害などの症状緩和のほか、腹腔病変として骨転移に伴う疼痛の軽減や、骨折や脊髄麻痺の予防と治療を目的とするものがあります。

緩和療法

胃がんにかかってしまったことでつらい思いをされている方、がんの治療を受けることでいろいろな心配事がある方には早期から相談にのります。胃がんの進行に伴い、疼痛や食欲不振、嘔気、嘔吐、腹水貯留に伴う腹部膨満などの症状が出てくることがあります。がんによる疼痛をがん性疼痛と呼び、生活の質を大きく損なうこととなります。疼痛対策としては非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)から医療用麻薬など強オピオイドを使用することがあります。また、上記のとおり緩和治療としての放射線治療を行うことがあります。
立川病院ではあらゆる医療用麻薬が使用可能です。必要な方は緩和ケアチームや地域連携室を利用することができます。