対象疾患
唇顎口蓋裂、合趾症、多趾症、耳の変形、副耳、耳瘻孔、臍ヘルニア(でべそ)など
唇顎口蓋裂
上口唇の皮膚や筋肉、口蓋(口と鼻を隔てる上顎部の構造)に裂(割れ目)が生じたものです。口唇裂、口蓋裂単独のもの、両方が合併するもの、両側のもの、片側のもの、完全裂のもの、不全裂のものなど様々な形があります。これは胎生期に起こる口唇や口蓋の組織の癒合不全によるものです。また、患者様の大部分は様々な要因によって発現する多因子遺伝と考えられており、特に特定の原因があるわけではありません。
口唇口蓋裂に対する治療は形成外科医のみならず他職種による専門的なチーム医療が長期間必要となることが多く専門機関への紹介を行っています。出生前の超音波検査で明らかになることも多く、出生前にお母さんやご家族へ今後の大まかな経過を説明させていただくこともしております。
合趾(指)症、多趾(指)症
概要
合指症:手や足の指(足は趾)がくっついている(癒合している)状態
多指症:手や足の指(足は趾)が多い状態
合多指症:上記両方の状態
当院形成外科では主に足趾の疾患につき対応しており、機能再建が必要な手指の疾患については適宜手の外科の医師(整形外科)あるいは近隣小児病院へ相談、紹介させていただいております。足趾の場合機能上問題になることはほとんどなく、主に整容的な側面での手術適応となります。
手術
整容的側面の強い手術適応であるため、ある程度安全に全身麻酔をかけられるという意味で1歳以降での手術をお勧めしています。ただし、乳幼児では術後創部の安静を保つことが困難であるため、個々の症例に応じてご家族と相談の上時期を決定します。
多指(趾)症ではレントゲンでの骨の状態などから残す指(趾)切除する指(趾)を選択し、余剰指(趾)切除術を行います。状況により、関節の形成や靭帯の形成が必要になる場合があります。合指(趾)症では基本的には組織が不足している状態で、なおかつ指(趾)間(みずかき)を形成する手術となります。合指(趾)の間の皮膚で指(趾)間を作り、不足する皮膚は内果(くるぶしの内側)などから採皮した皮膚で植皮(皮膚移植)を行います。
術後傷の安静のために、ワイヤー固定やギブス固定を行う場合があります。
耳の変形、副耳、耳瘻孔
概要
耳介は胎生4~20週にかけて形成されます。複雑な癒合過程を経て作られるため、先天的に最も異常が表れやすい場所の一つです。
【副耳】
典型的なものは耳前部にイボのような皮膚の突起があります。中に軟骨が含まれることも多く、頬部や頸部(頸耳)にできる場合もあります。
治療、手術
整容的な目的に行います。軟骨を含まずくびれがあるなどのいくつかの条件を満たせば、生後すぐに糸で縛ります(その後自然脱落します。)手術による切除の場合は全身麻酔をある程度安全にかけることのできる1歳以降に行います。
【耳瘻孔】
耳介周辺に針孔のような穴があれば疑われます。瘻孔(皮膚の穴)の位置、深さ、長さ、方向は様々です。
症状
無症状の場合も多くありますが、圧迫すると悪臭を伴った粥状の分泌物が出てくる場合があります。また、これが化膿することもあり、穴の周りが赤く腫れます。これが自壊したり、病院で切開排膿したりすると化膿は一度落ち着きますが、再度化膿することが多いため、一度化膿したものは化膿が落ち着いている段階での手術が望ましいと言えます。
手術
手術は瘻孔の完全切除です。瘻孔が残っていると再発する可能性が高いため、ルーペなどを用いて慎重に手術を行う必要があります。
【耳の変形】
耳垂裂:耳垂(耳たぶ)が分裂(割れている)しているものです。
埋没耳:耳介上部が側頭部の皮膚側に埋没した状態です。眼鏡・マスクがかけられない等の症状があります。1歳前後までであればワイヤーなどの矯正である程度回復可能な場合もあります。手術は就学前頃に行います。
立ち耳:耳介は一般的に20~30度聳立(しょうりつ:立っている状態)しています。それ以上聳立していても異常ではありませんが程度が著しい場合は立ち耳と言われ、治療の対象となります。
小耳症:耳介の一部あるいは全部が欠損する先天性異常です。外耳道が閉鎖している場合もあり、手術は8~10歳頃肋軟骨などを用いた手術で耳を形成します。小耳症治療については関連専門病院へのご紹介をしております。
臍ヘルニア・臍突出症(でべそ)
概要
臍の緒が取れた後、臍の根元が充分に閉鎖されない時に泣いたりした際に腹圧が上昇し、臍の根元から腸が皮下まで脱出して膨らんだ状態になることです。内容を指で押すと簡単に腹腔へ戻せる状態です。2歳までに90%で膨隆が見られなくなりますが、自然治癒しない場合や臍の根元の穴(孔)が2㎝以上で大きな場合、また、孔は塞がったものの皮膚が「でべそ」の状態で残り(臍突出症)、その形が気になる場合に手術を行います。
手術
2歳以降、全身麻酔で行います。臍周囲を切開し、脱出している腸を腹腔内に戻し、腹壁の穴(ヘルニア門)をしっかりと閉鎖します。さらに、自然な臍の凹みを形成するために、臍の底面を腹壁深くに縫いつける必要があります。