立川病院

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家族性高コレステロール血症

家族性高コレステロール血症(Familial Hyper cholesterolemia; FH)

主に常染色体顕性遺伝による血中LDLコレステロール(LDL-C)値が高値となる疾患です。
単一遺伝子による遺伝性代謝性疾患の中で最も高い頻度の疾患で、早期診断により早期治療につなげられ、救命にもつながる疾患です。
小児期・若年期からの配慮を要するものの日本での診断率は1%未満であり、医療従事者は知っておくべき疾患です。

<原因と頻度>

LDL受容体遺伝子(LDLR)あるいはその関連遺伝子(PCSK9、APOB、LDLRAP1(常染色体潜性遺伝))の変異が原因です。
片親から1つのみ受け継ぐヘテロ接合型FHは一般人に1/200~1/300と高頻度です。
一方、両親から1つずつ、計2つ引き継ぐホモ接合型FHは稀で1/160,000~1/300,000の頻度であり、原因遺伝子が複数あるため、複合ヘテロ型に加えて、ダブルヘテロ型のような重症型も存在しています。

<症状>

・腱黄色腫(手背、肘、膝など)
・角膜輪
・アキレス腱肥厚
・早発冠動脈疾患に罹患(20-30代で罹患しうる)
・生活習慣の改善が奏功しない高LDL-C血症

<成人FH(15歳以上)の診断基準(成人家族性高コレステロール血症診療ガイドライン2022)>

他の原発性・続発性高コレステロール血症を除外し、
① 高LDL-C血症(未治療180 ㎎/dL以上)
② 腱黄色腫(手背、肘、膝またはアキレス腱)あるいは皮膚結節性黄色腫(眼瞼黄色腫は含まない)
③ FHあるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(第一度近親者)

本人のLDL-C (mg/dL)
<100 100-139 140-179 180-249 >250
FH家族歴あり 否定的 否定できない FH FH FH
親のLDL-C値180 mg/dL以上
または
早発性冠動脈疾患の家族歴
否定的 否定できない FH疑い FH FH
家族歴なし 否定的 否定的 否定できない FH疑い FH

<治療>

・成人FH (成人家族性高コレステロール血症診療ガイドライン2022)


・小児FH
FH診断あるいはFH疑いとなった時、速やかに食事を含めた生活習慣指導、家系内調査を行い新たな患者診断につなげることが大切です。LDL-C値180mg/dL以上の時、10歳を目安にスタチン治療を開始します。(目標値はLDL-C値140㎎/dL未満。)
FHヘテロ接合型、ホモ接合型の時には専門医へコンサルトし、薬物療法の反応性が不十分であればLDLアフェレシスを考慮します。

・FH妊婦患者
妊娠前のカウンセリング、内科主治医と産科医間の連携が重要です。
妊娠計画の少なくとも3か月前、出産後授乳期には陰イオン交換樹脂以外の脂質低下薬の服用を中止するように指導します。スタチンは使用できません。
妊娠中は一般的に血中LDL-C値は上昇する(FH女性30%程度、一般女性20%程度)ことが知られており、現状、妊娠中のLDL値コントロールは困難です。ホモ接合型や重症の場合にはLDLアフェレシスを考慮します。

まとめ

本疾患の存在を認識し、内科・小児科主治医、循環器科医と連携し早期発見、早期治療導入につなげていくことが大切です。