顔面蜂窩織炎、顎骨骨膜炎、骨髄炎
顔面蜂窩織炎、顎骨骨膜炎、骨髄炎はいずれも歯性感染を起因とする重篤な感染性疾患であり、適切な初期対応が患者予後を大きく左右します。一般的にこれらの病態は、う蝕や根尖性歯周炎、智歯周囲炎、歯周病、外傷などから口腔内細菌が皮下組織や骨膜、骨髄へと波及して発症します。顔面蜂窩織炎は、皮下結合組織にまで波及した感染であり、顔面〜頸部の腫脹、発赤、局所熱感、疼痛、可動制限を認め、進行すると発熱や倦怠感、全身炎症反応を伴うことがあります。深部感染の場合は、口蓋や咽頭部へ波及し、呼吸困難や縦隔炎、敗血症といった生命に関わる合併症を引き起こす危険性があります。
顎骨骨膜炎は根尖病変などからの感染が骨膜に波及した状態であり、顎部の局所的な腫脹や圧痛、開口障害、嚥下障害などがみられます。X線所見では初期段階では明らかな変化が見られないことも多く、臨床症状やCTによる画像診断が診断の鍵となります。放置すると骨膜下膿瘍を形成し、さらに骨髄に波及して骨髄炎へと進展することがあります。
骨髄炎では、骨梁の破壊、骨壊死、瘻孔形成などが進行性に出現し、治療には長期にわたる抗菌薬投与や外科的デブリードマンが必要となります。全身管理の観点からも、発熱やCRPの高値、白血球増多などを伴う場合は、内科との連携や入院対応が望まれることがあります。
治療方針としては、原因歯の処置(抜歯、感染根管治療)と並行し、適切な抗菌薬投与を行います。第一選択薬は原因菌を想定したペニシリン系、セフェム系などが挙げられますが、重症例や耐性菌の可能性がある場合は培養検査と感受性試験が有用です。必要に応じて切開排膿やドレナージを行い、膿瘍形成を予防・改善します。
外来対応が困難な症例、特に気道周囲や眼窩周囲、深頸部への感染波及が疑われる緊急性の高い症例については、当科まで早期にご連絡ください。当院では上記に挙げた診断・治療のために血液検査や細菌検査、CT、MRI検査、アイソトープ検査を行うことが可能です。
また、患者様の全身状態や基礎疾患の有無にも留意し、入院下に全身管理のもと治療を行うことも可能です。