立川病院

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うつ病とストレス

精神神経科部長 桑原 達郎

うつ病はストレスが原因か?

外来で患者の皆さんのお話を聞いていると、「こんな嫌なことがあったから、自分はうつ病になりました」とおっしゃる方に出会います。考えてみれば当然で、嫌なことがあると気分が落ち込み、しばらく生活が手につかなくなることは、誰しもが経験することであり、気分の落ち込みにストレスが関与しているということについては、だれでもその因果関係を実感しているといってもいいでしょう。上記のような発言を患者さんがなさるのも、無理からぬことではあります。 では、ストレスがないとうつ病は発症しないのでしょうか。ストレスがないのに、うつ病を発症したという患者さんは一定数おられます。そんな患者さんたちの一部は、自分がなぜそんな症状を抱えてしまったのか理解できず、あれこれと原因を探そうとするのですが、どうしても思い当たらないのです。答えを言ってしまうと、「ストレスがなくても、うつ病が発症することはある」のです。

レジリエンスという概念

うつ病と診断されるためには、症状の強さ(日常生活に支障がある)ももちろんですが、症状の持続時間が重要です。いわば、落ち込んでもすぐに回復する人は、うつ病ではありません。

このようなすぐに立ち直る人のことを、レジリエンスが高いと表現することがあります。ストレスもレジリエンスも元々は物理学の用語ですが、便利な概念であるため心理学に転用されています。ストレスとは「外力による歪み」であり、レジリエンスは「歪みに抗して元の形に戻る力」という元々の意味があります。レジリエンスが十分に低ければ、ストレスがなくても自然に歪むかもしれないのです。

うつ病の危険因子を考える際には、ストレスの他にレジリエンスを考えることが必要です。昨今はストレスばかりが注目されていますが、時にはレジリエンスについて考えてみてはいかがでしょうか。