歯科インプラント治療を安全に受けるには?
歯科インプラント治療は歯を失った時の、補綴(歯を入れる)の一手段として,その長期維持・安定性が高く評価されています.義歯(入れ歯)しか治療方法がなかったケースにインプラント治療が適応されることで、煩わしい入れ歯をしなくとも食事ができるというのは素晴らしいことです。そして、歯の再生医療が一般化していない現代においては考えうる最良の治療であるとも言えます。しかし、一方では,インプラント手術に関する重篤な医療トラブルも報告されており,これらが社会的な問題となっています。患者さんからも「インプラントは絶対イヤです、知り合いが絶対やめておいたほうがいいと言ってました」、というご意見をいただくことも多いのが現実です。これでは、せっかくの治療法も本当に必要で困っている方に治療提供をすることができません。
そこで、インプラント治療のトラブルに悩まされないためにどのようなことに気をつけたら良いか2回に分けてご紹介させていただきます。
1.「早くこの歯を抜いて、同時にインプラントを入れましょう。」は正しいか。
このようなことを言われたという患者さんを数多く拝見します。これの何が問題でしょうか。まず、本当に抜いたほうがよい歯であるかが問題です。本当に保存できない(残せない)歯は抜いたほうが良いでしょう。当科では歯根端切除術という、通常の根管治療(歯の頭に穴を開けて根の治療)で治せない歯を治療する方法を数多く行っています。詳細は当科のWEBページをご参照ください。インプラントにしましょうと言われた歯を、この手術で治したケースは決して少なくありません。患者さんによっては少しでも長く自分の歯を残したいという方もおり、そのようなケースにはこの手術の適応を考えます。もちろん、この手術も全てに適応されるわけでわありません。最初からインプラント治療の方が適していることもあり、担当の先生としっかり話し合うことが重要です。
次に抜歯と同時に入れるということも注意が必要です。本来、インプラント(異物)を体内に入れるとう手術は無菌的に行われるものです。整形外科の足のインプラント手術は特別な手術室を使用することもあるほどです。口の中の手術は無菌的に行うのは難しいですが、なるべく細菌の数を減らして行うことに努めています。そのようなインプラントを重症感染している歯を抜歯して同時に入れることは避けたほうが良いでしょう。実際、このようなことが行われたトラブルも経験しており、報告も多数あります。歯が折れたりしたことで感染はしていないが抜歯をしなくてはならないケースにおいては、同時にインプラントを入れることが有利な場合があります。
次回は、
2.「インプラントは自分の歯のように使えますよ。」は正しいか。
3.「簡単な手術ですぐに終わりますから。」は正しいか。
についてご紹介させていただきます。