立川病院

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頚椎症性脊髄症について

整形外科 西山 雄一郎

頚椎症性脊髄症について

高齢化社会を迎えた我が国では、2010年時点での平均寿命が男性79.6歳、女性が86.4歳、65歳以上の高齢者人口が2.956万人に及んでいます。わずか60余年の間に平均寿命が男女とも約30年延長しました。急激な高齢化により疾病構造も様変わりし、骨粗鬆症、腰部脊柱管狭窄症、頚椎症性脊髄症などの整形外科疾患でお困りの患者さんが増えています。
そこで今回は、頚椎症性脊髄症についてお話します。

頚椎症性脊髄症とは、頚部脊柱管(脊柱管:脊椎内の神経の通り道)の狭い状態に、後方骨棘(骨のトゲ)や、椎間板腔狭小化、椎間板後方膨隆などの経年的な頚椎の変化が起こり、さらに頚椎の前後屈不安定性や軽微な外傷が加わって脊髄麻痺を発症する疾患の総称です。
特徴的な症状として、手指のしびれ、頚部から腕、手にかけての痛み、うまく歩けないなどの歩行障害、手指の細かい動きができなくなる(巧緻運動障害)、myelopathy hand*1、顔面を除く主に四肢の感覚障害、四肢の筋力低下があります。
男性が女性の2倍以上発症しやすく、50歳代以上に多いとされています。
軽症例では、自然経過で症状が改善する例もありますが、中等度では、徐々に四肢不全麻痺へ進行することが多く、急速に進行する例もあります。

治療には、保存療法として、消炎鎮痛薬、プロスタグランジン製剤、ビタミンB12などの薬物療法、装具療法、頚椎牽引療法などがありますが、主に軽症例に対して行われます。
進行性あるいは長く持続する場合、軽症例でも保存療法で効果がなくMRIで脊髄圧迫の強い場合は手術適応になります。

一度脊髄麻痺症状が出現すると保存療法に反応しにくく手術が行われることが多いです。手術のタイミングが遅れると脊髄の回復力が劣り、症状が改善しにくくなると言われているので、適切なタイミングで手術を検討することが大事です。

*1 : myelopathy hand : 小指、薬指の内転、進行すると伸展も障害され、手指の素早い把握動作とその解除(いわゆるグーパー)がスムーズに行えなくなる状態