親知らず抜歯について
当科では親知らず(智歯)の抜歯が年間約900本以上と非常に多く専門的に行っています。親知らずは斜めや水平になって骨の中に埋伏している場合が多く、一般開業歯科では抜歯困難と診断されて依頼されます。通常は外来通院で行いますが、痛みに弱い方や深く埋まっていて抜歯が困難な場合は、1泊入院下で静脈内鎮静法を行った上で痛くなく抜歯することもあります。
また全身麻酔(4-5日入院)で上下左右同時に抜歯することも可能です。
当科の木津共著で「智歯の抜歯ナビゲーション」(クインテッセンス出版)という抜歯の本をだしています。
親知らず(智歯)は歯肉や骨の中に埋まっていて、彎曲など歯根の異常をともなっていることが多く、抜歯は困難で専門的な知識や技術が必要です.当院歯科口腔外科は「親知らず抜歯」の専門科ですが、それでも術後に著しい痛みや腫れなどの不快症状を生じることがあり注意が必要です。抜歯しない場合の欠点と、抜歯した場合の欠点(起きるであろう不快症状など)の説明を受け、納得の上で抜歯されることをお勧めします。
親知らず抜歯の必要性について
・親知らずが傾斜したり骨に埋まって手前の歯に引っかかっているため、将来も生えてこない。・手前の歯との間に食片が入り込んで、抜歯しないでいると虫歯や歯周炎になって、親知らずと手前の第二大臼歯を抜歯しなくてはならなくなる可能性がある。
・親知らずのまわりに汚れがたまり、歯肉に炎症を起こしている。
・親知らずのまわりに膿の袋ができて骨を吸収していて、将来大きくなる可能性がある。
・歯列不正の原因になっている.将来その可能性がある。
抜歯の術式 (手順)
①麻酔 ➔ ②切開する ➔ ③骨を削除する ➔ ④歯を分割する ➔ ⑤抜歯 ➔ ⑥歯肉を縫合する
手術時間は40~60分間くらいです.手術中の状況により術式が変更になることがあります。
術後に鎮痛剤と抗菌剤の薬を処方します.抜歯の翌日に洗浄処置、7日後に縫合糸を取ります。
通常は通院で行いますが、痛みに弱い方は1泊入院して静脈内鎮静を行い抜歯することもできます.歯根と顎の神経の位置関係を詳しく見るため、CT検査を受けてもらうこともあります。
術後に以下の症状が出ることがあります
・痛み…2~4日間あります。・頬の腫れ…4~7日間あり、口が開きにくくなったり食事が取りづらくなることがあります。
・出血…にじむような出血がありますが心配いりません.量が多い時はガーゼを約20分間かんで下さい。
・内出血…頬に紫色や黄色のあざが出ることがまれにありますが、1~2週間で消失します。
・下唇と舌の知覚麻痺…下顎の親知らずの歯根の下方には顎の神経が通っています。近接している場合には、抜することがほとんどですが、非常にまれに数年ごく軽いしびれ感が残ることもあります。唇が曲がったり、話しづらいということはなく、見た目ではわからない軽い麻酔が効いているような状態です。下唇の知覚麻痺のデータ上での発現率は0.4~5.5%、6ヶ月後にも認めていたのは全体の0.05%と報告されています。麻酔の注射の針先が舌の神経を刺激して、非常にまれに舌にしびれが出ることがあります。
・治癒不全…血液のかさぶたが取れたり食片が入って、治りが遅くなって痛みや腫れが出ることがあります.抜歯後に感染を起こした場合には、効果のある抗菌剤を選び内服してもらいます。
・発熱…まれにでることがあります.抜歯後当日は、無理はせず体を安静にして早目にお休みください。