腰痛について ―ぎっくり腰―
平成25年の国民生活基礎調査によりますと、腰痛の自覚症状のある方の割合(対人口1000人)は男性では1位、女性でも2位であり、実際当院でも腰痛で外来を受診する方は大変多く、初診外来をやっていますと必ず1人以上は来院しているような印象です。今回は外来に来られる腰痛の方の中で最も多い『ぎっくり腰』についてのお話しです。まずぎっくり腰とはよく耳にするかと思いますが、どんなものなのでしょうか?
ぎっくり腰とは正式には腰椎捻挫や腰部筋筋膜炎のことを表し、腰部をひねったり腰部にある筋肉や筋膜に炎症が起こる事を言います。たとえば朝起きようとした際や体を動かそうとした際、足元の物を取ろうとした際、物を持ち上げようとした際、庭の手入れ後や農作業後の腰痛などがこれに当たります。重たい荷物を持つことの多い若い働き盛りの肉体労働者に多い印象もありますが、若い人から高齢者までどの年代でも起こる可能性があります。外来に来られてお話を聞いているうちに大体ぎっくり腰ではないかと想像できることが多いのですが、他の疾患を否定するためにレントゲン撮影を行うことが多いです。
捻挫あるいは筋肉の炎症ですから、通常レントゲンでの異常はありません。また筋肉や筋膜の異常であり脊髄神経の異常は伴わないため、通常足のしびれや痛みも出ることはありません。足の症状がある場合は椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などの疑いが高くなり、他の検査が必要となる場合もあります。治療は安静(腰の筋肉を休ませる)だけでも2-3週間で良くなりますが、炎症を取るための内服薬(いわゆる痛み止め)や湿布、座薬などを用いますと、より早期の回復が期待できます。また症状が強い場合は、コルセットを使用するのも効果的です。よく痛み止めは「痛みを止めるだけでしょ?」とおっしゃる方がいますが、『痛み止め』は炎症を抑えるという立派な治療薬であり、腰部の炎症を軽減させるためにとても効果が期待できます。またほとんどの方はぎっくり腰を繰り返すことも多いと思います。ぎっくり腰を繰り返さないためにも予防法についてもお話できますので、ぜひ来院することをお勧めします。
以上ぎっくり腰についてのお話でした。つづく…。