人間ドックでの上部消化管内視鏡

胃がんはよく知られた悪性疾患の一つであり、早期発見・早期治療をめざして胃がん検診が行われています。がん検診の有効性は死亡率が低下したかどうかで評価されます。2016年2月に「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針」が一部改正され、胃がん検診の方法として従来の胃X線（バリウム）に加え、上部消化管内視鏡も認められました。人間ドックでも上部消化管の検査として内視鏡の占める割合が高くなってきています。尚、人間ドックの上部消化管内視鏡は胃がん検診としての目的だけでなく、食道や十二指腸も観察し逆流性食道炎や十二指腸潰瘍等の良性疾患も診断の対象としています。

一方、人間ドックの検査項目の中で内視鏡は侵襲性が高い検査と考えられています。人間ドックは定期的に健康を確認するために受診するものであり、原則無症状者を対象としています。よって人間ドックで内視鏡を行う場合には、受診する方が不利益を被らないように万全の安全対策をとらなければなりません。当院の人間ドックでも事前の問診や診察の結果、内視鏡を安全に行えないと判断した場合には検査の中止や延期もご相談させていただくことがあります。また、内視鏡を受診する方が苦痛を伴わないように配慮する必要もあります。当院人間ドックでは上部消化管内視鏡を希望した方の約85%が鼻から内視鏡を挿入する方法（経鼻内視鏡）で検査を受けています。経鼻内視鏡は上部消化管内視鏡を受ける方の苦痛軽減に有用で、検査の苦痛を許容できる方が多いことも報告されています。もちろん口から内視鏡を挿入する方法（経口内視鏡）での検査も可能です。

内視鏡医をはじめとする医療スタッフにとって内視鏡は日常的なものですが、内視鏡を受ける方々には非日常的なものだと思います。内視鏡が初めての方はもちろん、1年あるいは数年に1回の検査の方も、検査前は不安で緊張している方がほとんどです。

当院の人間ドックでは受診者の方々に寄り添うように「高い精度」を保ち、「安全」に、「適切な対応」で上部消化管内視鏡を実施するように心掛けています。